卵子提供で生まれたことを子どもに伝える?「出自告知」について考える

卵子提供を検討されているご夫婦から、私たちが非常によく受けるご相談があります。

「卵子提供で授かったことを、将来、子どもに伝えた方がよいのでしょうか?」いわゆる「出自告知」についてのご相談です。

卵子提供を受けることを決断するまでには、治療方法や卵子ドナーの選定、費用、妊娠・出産への不安など、さまざまなことを考える必要があります。

しかし、治療そのものとは別に、多くのご夫婦が悩まれるのが、「生まれてくる子どもに、卵子提供という事実をどのように伝えるのか」という問題です。MONDOMEDICALへ卵子提供のご相談に来られる方のほとんどが、この問題について考え、悩まれているように感じます。

今回は、最近報道された国内の調査結果をきっかけに、卵子提供における「出自告知」について考えてみたいと思います。

 

生殖補助医療施設の96.5%が「本人に告知すべき」

2026年9月、日本経済新聞では、第三者から提供された精子や卵子によって生まれた子どもへの出自告知について、こども家庭庁の研究班による調査結果が報じられました。調査は、日本産科婦人科学会に登録された体外受精などを行う634施設を対象に実施され、416施設からの回答が分析されています。

その結果、第三者から提供された精子や卵子を使った生殖補助医療によって生まれたことについて、回答した医療施設の96.5%が「本人に告知すべき」と回答したと報じられています。医療現場では、子ども自身が自分の出生について知ることを重視する考え方が広がっていることがうかがえます。

一方、日本では第三者からの精子・卵子提供によって生まれた子どもの「出自を知る権利」について、十分な法制度が整備されているとはいえません。

さらに今回の調査でも、ドナーの氏名や住所など、個人を特定できる情報をいつ、どこまで開示するべきなのかについては、医療施設の意見が分かれています。つまり、「卵子提供によって生まれたことを子どもに伝えること」と、「卵子ドナーが誰なのかを子どもが知ること」は、分けて考える必要があります。

 

実際に卵子提供を検討されるご夫婦の考え方は様々です

「96.5%が告知すべき」という数字を見ると、出自告知について既に明確な答えが出ているように感じるかもしれません。しかし、私たちが実際に卵子提供を検討されているご夫婦とお話ししていると、それほど単純な問題ではないことを日々感じています。

たとえば、「子どもには、小さい頃から少しずつ伝えていきたい」と最初から決めているご夫婦がいらっしゃる一方で、「卵子提供を受けたことは夫婦だけの秘密にして、子どもには伝えないつもりです」と考えているご夫婦もいらっしゃいます。

また、「まず自分たちの両親に相談してから決めたい」という方もおられますが、実際にご両親へ相談したところ、「そこまでして子どもを持つ必要があるのか」、「血のつながりがないことを将来どう説明するのか」など、否定的な意見を受けて、治療を断念するケースもあります。

それでも最終的に、「両親の意見は理解するけれど、これは私たち夫婦の人生であり、私たちが築いていく家族の問題だから、夫婦で決めたい。そして将来、子どもにもきちんと伝えたい」と決断されるご夫婦もいらっしゃいます。反対に、家族や親族には伝えず、夫婦だけで卵子提供を受けることを選択する方もいらっしゃいますので、家族のあり方や価値観、これまで不妊治療を続けてきた背景、親族との関係は、一組一組異なります。

そのため、出自告知についても、すべてのご家庭が同じ考えになる事が難しいとも考えられます。

 

なぜ「子どもに伝える」という考え方が重視されるようになっているのでしょうか

海外では、ドナーから提供された精子・卵子によって生まれた子どもに対し、その出生について早い段階から伝えることを推奨する考え方があります。

英国の生殖医療を規制する公的機関HFEA(Human Fertilisation and Embryology Authority)は、ドナーによって生まれた子どもへの説明について、幼少期から話すことが望ましいと案内しています。その背景には、大人になってから偶然、自分がドナーによって生まれたことを知った場合、本人や家族に大きな心理的影響を与える可能性があるという考えがあります。

また、幼い頃から年齢に応じた説明を重ねることで、「ある日、突然知らされる重大な秘密」ではなく、本人にとって自然な「自分が生まれた物語」の一部として受け止めやすくなるという考え方もあります。

もちろん、すべての子どもが同じ反応をするわけではありません。

成長するにつれて、「卵子を提供してくれた人はどんな人なの?」、「私はその人に似ているの?」、「会うことはできるの?」といった疑問を持つ事も想定されますが、一方で、ドナーについてそれほど強い関心を示さない子どももいるでしょう。

大切なのは、子どもが疑問を持ったときに、家族の中で安心して質問できる環境をつくることだと思います。

 

「告知しない」と考えるご夫婦にも理由があります

出自告知について考える際には、「告知しない」と考えているご夫婦の気持ちにも目を向ける必要があります。

実際のご相談では、

「子どもを傷つけるのではないか」

「母親との関係が変わってしまわないか」

「自分だけ家族と血がつながっていないと思わせてしまわないか」

「学校や友人に話してしまい、周囲から何か言われないか」

「祖父母や親戚との関係に影響しないか」

「そもそも、どのような言葉で説明すればいいのか分からない」

といった不安を持たれることがあります。

卵子提供を受ける女性の中には、「自分には子どもとの遺伝的なつながりがない」ということについて、治療開始前から複雑な気持ちを抱えている方もいらっしゃいます。

そのため、出自告知について迷うこと自体は、決して珍しいことではありません。

 

ただし「家族だけの秘密」を守り続けることが難しい時代にもなっています

もう一つ、これから卵子提供を受けるご夫婦に知っておいていただきたい変化があります。

それが、DNA検査や遺伝子解析サービスの普及です。

現在では、本人が検査を受けていなくても、近い血縁者がDNAデータベースなどを利用することで、遺伝的なつながりが明らかになる可能性があります。欧州生殖医学会(ESHRE)も、生殖細胞提供をめぐる情報提供を考えるうえで、一般消費者向けDNA検査などの普及を重要な環境変化として取り上げています。

つまり、「親が伝えなければ、子どもが卵子提供の事実を知ることはない」とは必ずしも言えない時代になりつつあり、だからといって「必ず告知しなければならない」という意味ではありません。

しかし、「告知しない」という選択を考える場合にも、将来、別の経路から子ども自身が知る可能性については、ご夫婦で考えておく必要があるでしょう。

 

 

「いつ伝えるか」も大切な問題です

子どもへ告知すると決めても、次に出てくるのが、「何歳になったら伝えればいいのでしょうか?」という疑問です。例えば、「18歳になったら、すべて説明する」という方法だけが告知ではありません。

海外では、幼い頃から年齢に合わせて少しずつ説明していく考え方があり、幼少期には、「お父さんとお母さんは、あなたに会いたいとずっと思っていたんだよ」、「お母さんのお腹の中であなたが育つために、助けてくれた女性がいたんだよ」といった、その年齢で理解できる範囲から話を始める方法も考えられます。

そして成長に合わせて、卵子や遺伝、卵子ドナーについて少しずつ詳しく説明していく。

一度の「告白」で終わらせるのではなく、成長に合わせて何度も話していく家族の会話として考えるという方法です。実際、HFEAも、子どもの年齢に応じた説明を行い、後から生まれる質問にも答えられる環境をつくることを案内しています。

 

卵子ドナーについて「何を伝えられるのか」も考えておく必要があります

ここで、もう一つ重要な問題があります。

子どもに卵子提供について伝えた場合、将来、「卵子を提供してくれた人について知りたい」と言われる可能性があることです。ドナーについて提供される情報や、将来的に本人を特定できる情報へアクセスできるかどうかは、国や制度、治療を受けた医療機関・プログラムなどによって異なります。

たとえば英国では、一定の条件のもと、ドナーによって生まれた人が成長後にドナーに関する情報を取得できる制度が設けられているようですが、日本では第三者による卵子提供について、子どもの出自を知る権利やドナー情報の保存・開示を含め、制度上の課題が残されています。

そのため卵子提供を検討するときには、妊娠率や費用だけではなく、「このプログラムでは、ドナーについてどのような情報が残るのか」という視点も、今後ますます重要になると考えています。

 

モンドメディカルが考える「出自告知」

私たちは、卵子提供によって家族を築くことを検討されているご夫婦に対して、一律に、「必ず子どもに告知してください」あるいは、「家族だけの秘密にしてください」と判断を押し付ける立場ではありません。

家族のあり方や価値観、これまで歩んできた背景は、それぞれ異なるからです。

最終的にどのような選択をするのかは、ご夫婦が十分に話し合って決めていくことだと考えています。

一方で、卵子提供を受けることを決める段階から、「将来、子どもにどのように伝えるのか」について、一度はご夫婦で十分に話し合っていただきたいとも考えています。大切なのは、治療を受ける現在のご夫婦の気持ちだけではありません。

成長したお子様が、自分自身の出生についてどのように感じるのか。

「私はどうやって生まれたの?」と聞かれたとき、どのように答えるのか。

「卵子を提供してくれた人について知りたい」と言われたとき、どのような情報を伝えることができるのか。

そうした未来についても、少しずつ想像してみることが大切ではないでしょうか。

 

卵子提供は、妊娠・出産だけではなく、その先の家族について考えること

卵子提供を検討していると、どうしても、「妊娠できるのか」「どのドナーを選ぶのか」「正常胚を得られるのか」「費用はいくらかかるのか」といった、目の前の治療に意識が向きがちです。

もちろん、どれも非常に大切なことですが、卵子提供によってお子様を授かるという選択には、出産した後にも長い家族の時間があります。

卵子提供は、妊娠するためだけの治療ではなく、その先に続く家族の人生をつくっていく選択でもあります。

出自告知について、今すぐ完全な答えを出す必要はないかもしれませんが、卵子提供を検討する段階から、「私たちは将来、このことを子どもにどう伝えていきたいのだろう」と、ご夫婦で話し始める、その時間そのものが、これから築いていく家族について考える大切な一歩になるのではないでしょうか。

モンドメディカルでは、卵子提供の治療方法や費用、卵子ドナーの選定だけではなく、卵子提供を検討する中で生じるさまざまな不安や疑問についてもご相談いただけます。

「卵子提供を検討しているけれど、まだ決断できていない」

「夫婦で考え方が違い、どのように話し合えばよいか分からない」

「出自告知についても含めて、まず話を聞いてみたい」

という段階でも問題ありません。

 

卵子提供をご検討されている方は、LINEまたはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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