韓国で代理出産・卵子提供はできる?制度や考えられる選択肢とは

以前のコラム(『代理出産は日本で出来る?方法や法律上の課題』、『卵子提供と日本の法律やガイドライン』)で日本では代理出産及び卵子提供に関する法整備が整っておらず、倫理的な観点から日本産科婦人科学会がこれらの治療を認めていないという事をご紹介いたしました。

今回のコラムでは、隣国の韓国における生殖補助医療に関する法律やルール等についてご紹介させて頂きます。

 

韓国で代理出産・卵子提供はできる?

結論からお伝えすると、韓国では代理出産は過去の裁判事例によって禁止され、卵子提供は『生命倫理及び安全に関する法律(以下「生命倫理法」)』により禁止されています。

韓国における代理出産について

韓国での代理出産は「現行法上、いかなる場合も代理母の契約は許されない」とする判例が出ているため、代理出産を行う事はできません。

韓国の現行法では、親子の関係を決める基準は「母の出産」という自然的事実に基づきます。 もし、代理母を通じて子どもを産む場合、養子縁組などの法的手続きを通じて、親子の関係を形成しなければなりません。

過去、韓国のおいてある夫婦が上記の件につき訴訟を起こしています。

本件夫婦は自然的な妊娠が難しい要件を持っていたため、代理母出産を通して、代理母が妊娠し、米国のある病院で娘を出産しました。

遺伝子検査の結果、夫婦の娘であることは明白でしたが、米国病院が発行した出生証明書には代理母との記載がされていました。

夫は娘を受け取った後、鐘路区役所に娘の出生申告をする際、「母」の欄に妻の名前を記載しましたが、出生証明書に記載された母の名前と一致せず、出生申告が差し戻されました。

これに対し、夫は「家族関係登録法が定めるところに従い、出生証明書を添付した」とし、「生命倫理法が禁止する営利目的の契約でもなく、夫婦の受精卵を着床する代理母は法律上禁止されているわけでもない」として、訴訟を起こしました。

同地裁は判決理由について、「科学技術の発展に伴い、法律上の親を”出産”という自然的事実ではなく、遺伝的共通性、または出産母の意思を基準に決めるべきだという意見もあり得るが、母子関係は単に法律関係にとどまるのではなく、妊娠期間と出産など長い時間をかけて形成された部分が含まれているため、情緒的な連帯関係も”母性”として法律上保護を受けるのが妥当だ」と述べました。

同地裁は判決理由について、「出生届の母の人的事項と出生証明書の母の人的事項が同一でなければならず、万一こちらが一致しない場合は出生届を受理してはならない」としました。

また、裁判所は代理母契約に対する立場も明らかにしており、 「夫が配偶者以外の女性と性交渉を通じて子どもを産ませる古典的な代理母の場合だけでなく、夫婦の精子と卵子で作った受精体を代理母の子宮に着床させた後に出産するいわゆる“出産代理母”も韓国の法令の解釈上許容されない」とし「代理母契約は善良な風俗その他の社会秩序に違反したもので、民法第103条によって無効」と述べられました。

 

第103条(反社会秩序の法律行為)

善良な風俗その他の社会秩序に違反した事項を内容とする法律行為は、無効とする。

「国家法令情報センター(国が運営)より抜粋」

韓国における卵子提供について

はじめに『生命倫理法』について解説いたします。

生命倫理法とは、人間を複製する行為(クローン人間の製造)を禁止し、治療目的の幹細胞研究は制限的に認めているのが主な内容となります。

生命倫理法案は、2000年1月に法案の計画が発表されて以来、遺伝子複製研究において科学が介入できる限界に対し、科学界、宗教界、社会団体間で深刻に議論がなされ、4年間の難航期間を経て、2003年12月に制定されました。

生命倫理法23条は下記の行為を禁じています。

 

第23条(胚の生成に関する遵守事項)
1 何人も、妊娠外の目的で胎芽を生成してはならない。
2 何人も、胎芽を生成するとき、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
(1)特定の性を選択する目的で卵子と精子を選別して受精させる行為
(2)死亡した人の卵子又は精子に受精する行為
(3)未成年者の卵子又は精子に受精する行為 ただし、婚姻した未成年者がその子を得るために受精する場合を除く。
3 何人も、金銭、財産上の利益又はその他の反対給付を条件に胎芽若しくは卵子若しくは精子を提供し、利用し、又はこれを誘引し、若しくは斡旋してはならない。

引用:生命倫理及び安全に関する法律

 

生命倫理法によれば、不妊治療法の開発のための胚研究は認められていますが、精子・卵子の商業的な流通は禁止されているため、韓国では卵子提供を行うことはできません。

 

また、2020年7月6日付け国際新聞に次の記事が掲載されておりました。

■卵子提供の現実的代案を探す『セファ病院 リ サンチャン院長のインタビュー』

不妊病院を訪れる夫婦たちが毎年増えています。特に、結婚が遅れたり、高齢で子供を持てない女性が多い状況です。このように妊娠が困難な女性は、他の女性から卵子を受けなければなりません。

しかし、卵子を提供する人は多くありません。卵子を提供するための環境が非常に厳しいことが要因の一つと言えます。

卵子提供のためには、排卵注射を10日間打たなければなりません。そして卵子採取のために産婦人科を3回ほど訪問しなければならず、その費用だけでも400万-500万ウォン程度かかります。(日本円で約50万円前後の費用)

現在、韓国では、第三者から金銭を受け取り、卵子を提供することは違法とされています。 「生命倫理および安全に関する法律」(生命倫理法)第2節第23条3項には、金銭、財産上の利益またはその他の反対給付を条件に、胚芽や卵子または精子を提供または利用したり、これを誘引したり斡旋したりしてはならないことが明示されています。このため、自分の時間と費用をかけながら、代価なしに善意で他人に卵子の提供を受けることは、ほとんど不可能といえます。

親族や親友が卵子を寄贈する場合はありますが、こちらも様々な条件が合わなければならず困難な状況といえます。卵子売買は宗教界の勢力が強い韓国では反対勢力の意見が強く、合法化の議論すら行われていない状況です。

 

韓国以外で代理出産・卵子提供をする選択肢

隣国の韓国では生命倫理法や過去の裁判事例によって代理出産及び卵子提供が禁止されています。

代理出産はロシア、ウクライナ、アメリカ等の国々、卵子提供はアジア(台湾、マレーシア)、アメリカ、ロシア等で行う事ができます。

過去のコラムで代理出産及び卵子提供を選択できる国等をご紹介しておりますので、こちらもご覧ください。

 

コラム:卵子提供と日本の法律やガイドライン

コラム:代理出産のメリットとデメリットとは?

 

韓国での代理出産・卵子提供についてまとめ

今回のコラムでは、韓国における代理出産及び卵子提供の法律やルールについてまとめましたが、法律や過去の判例で治療を行う事ができない状況にあります。

モンドメディカルではお客様が安心して代理出産及び卵子提供を行って頂けるプログラムを提供しておりますので、詳しい内容についてはお気軽にお問合せください。

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